身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
 結乃の祖母が倒れたと聞き駆け付けた病院で、耀は結乃の生い立ちの一端を知る。

『結乃ちゃんは明るくていい子なんだ。一度に両親を亡くしたのに気丈に振舞って。まだ高校生だったのに。それに、お母さんの実家の方がいい暮らしができただろうに、ひとりになったお祖母ちゃんが心配だって山崎の家に戻って来たんだ』

 自分を結乃の恋人だと勘違いした知人の男性がしんみりとした様子で語ってくれた。

 その時耀は祖母が倒れたと聞いた時の結乃の怯えきった表情の理由がわかった気がした。

 家族が倒れたと聞いたら驚くのは当然だが、結乃は真っ青になって震え足が竦んで動けない程動揺していた。
(きっと、ご両親を失った時のように突然お祖母さんを亡くすんじゃないかと、瞬間的に考えてしまったんだろう)

 幸い結乃の祖母は命に別状は無いようだが、骨折なら長期に渡る入院が必要になりそうだ。

(あの家で若い女性がひとりで暮らすのは心配過ぎる。お祖母さんが退院するまでは嵯峨家で暮らした方がいい)

 耀は常識的に考え、結乃にそう勧めようと思った。
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