身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
 結乃は大学生の時に嵯峨家を出たが、学費だけは伯母がまとめて払ってくれた。お陰で卒業できたのは事実。恩を返せと言われてしまうと突っぱねられない。
 
 しかし何よりの決め手は『お見合いを成功させたら望む分の金を嵯峨家から出す』と言われたことだった。
 
 結乃はお金が欲しい。
 
 亡き祖父により父が子供の頃、『将来三世代で暮らしたい』と建てた家は築45年。
 かなり老朽化が進み、水回りも古いまま。一階の雨戸もガタついているし勝手口の木製ドアも腐りかけている。

 古い設計なので段差が多くバリアフリーなどもってのほか。安全面や防犯面問題があり、足腰の弱ってきた祖母がこのまま住み続けるのは難しい。

 半年前も祖母が和室の入り口の段差で足を引っかけ転んだ拍子に突いた手首を痛めてしまった。
 幸い軽症だったが肝が冷えた。
 祖母がこれからも安心した生活をするためには家の大規模修繕が必要だと痛感した。
 それにはまとまった費用が必要だ。売って引っ越すと言う選択肢もあるが、住み慣れた思い出の家を離れたくないという祖母の強い思いを結乃は知っている。

(私だってあの家は残したい)
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