身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
 実際に祖父が『いつまでも逃げ回って結婚しないならあいつは次期社長に指名しない』とへそを曲げていることは母に聞いていた。
 面倒だなと思っていたが都合がいいのでその事実を利用した。

 なんでもいい。とにかくすぐに結乃を保護する理由が必要だったのだ。

 結乃は自分に無い明るさと素直さを持った女性だ。だから誰とでもすぐに仲良くなれる。
 湊もすっかり結乃を気に入っているし、実家の母も随分可愛がっているようだ。

 感情で表情がくるくると変わるから見ていて飽きない。すこしおっちょこちょいなところも愛らしい。
 耀が世話を焼くと恐縮しながらも嬉しそうな顔でお礼を言う。美味しそうに食べ、真っすぐ笑う。からかうと軽く拗ねてみせる。

 耀は彼女が傍に居ると呼吸が楽なことに気が付いた。
 逆に言うと今までは息がし辛くてもそれを自覚していなかったということだ。

(湊に『結乃さんにはマイナスイオン発生装置がついてるんじゃないですか』と言われたことがあるが、あながち否定できないな)
 
 結乃と共に暮らし始めてすぐに耀は彼女への想いを自覚した。

 彼女を愛しく思っていると。
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