身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
(思えば見合いの時から結乃に惹かれていたんだろうな。誰かを本気で好きになったことがなかったから自覚できなかった。情けないな)

 契約結婚を持ちかけたのは彼女への同情というより、ただ自らの手元に置きたいという気持ちが強かったのだ。

 結乃への想いを自覚した後も耀は結乃に触れずにいた。

 初々しい様子から結乃は交際経験がないと察していたし、今はとにかく結乃が安心してこの家で暮らせるようになるのが第一だ。
 まして結乃は自分のことを期間限定の結婚相手だと思っている。

 とはいえ、愛しい女性が毎日同じ家で生活しているのだ。結乃の体温や香りを身近に感じる度に抱きしめたくなる衝動が沸き上がる。
 彼女に触れたい男の欲と、守りたいという気持ちがせめぎ合っていた。

 耀の我慢を瓦解させたのは嵯峨巧巳だった。

 結乃の会社の裏で顔を合わせた時、巧巳が結乃へ向ける眼差しは姉妹でも妹でもなく、愛しい女を見るものだった。
 そして自分を睨む表情には敵意がありありと浮かんでいた。

 巧巳の〝自分が結乃の一番の理解者だ〟という口ぶりが気に入らなかったし、結乃の話からも従兄を慕っているのが伝わってきて簡単に嫉妬心が煽られた。
< 111 / 160 >

この作品をシェア

pagetop