身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
(『困ったことがあったら僕に頼って欲しい』? 冗談じゃない。結乃は俺の妻だ)

 さらに結乃が無邪気に『妻としての役割を下さい』と耀の理性をたやすく砕き、耀は『妻を抱いて何が悪い』と開き直ったのだ。
 そんな身勝手な自分を結乃は健気に受け入れてくれた。

 あれ以来何度も彼女を抱いているが、ベッドの中で見せる蕩けた表情は自分だけのものだと思うと耀はこの上ない満足感で満たされる。
 一方で耀は歯がゆさも感じている。
 素直で感情豊かな結乃なのに、喜怒哀楽の”哀”の部分だけは笑顔の後ろで押し隠しているのだ。

 無理矢理暴こうとなどとは思っていないが、できることなら寄り添いたい――生涯をかけて。

 傷ついた過去があるのなら、もう二度と転ばないように彼女の足元の小石は全部取り除きたい。

 過保護だと言われても彼女を守りたいと気持ちは譲れないのだ。

「専務、そろそろ報告しても?」

 コーヒーを飲み終えようとしていると、湊が薄いファイルを手に声をかけてきたので無言で頷く。
< 112 / 160 >

この作品をシェア

pagetop