身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
 家族そろってお笑い番組を見た居間、母と祖母と三人並んで夕食を作ったキッチン、結乃が産まれた時に庭に植えたという二本のブルーベリーの木は夏になると沢山実を付け祖母がジャムにしてくれた。

 息子夫婦と夫を相次いで亡くした祖母から思い出の家まで奪いたくない。
 このまま穏やかに暮らしてほしい。
 結乃に残された、ただ一人の家族。祖母の為なら結乃は何でもできる。
 
 結乃は家の改修費用と今後の祖母の生活の金銭的援助を条件に伯母の話に乗ることにした。

(お金に目が眩んだという不純な動機だけど、向こうだって家柄しか見てないんだもんね。ダメ元で、被るだけ良家令嬢のネコを被ってやろう。それにこれも一つの縁なんだから)
 結乃が不安を振り払うようにそんなことを考えているとハイヤーは目的のホテルに到着する。

 初めて足を踏み入れる高級ホテルのロビー。その絢爛(けんらん)さに圧倒されつつ伯母の後を付いて歩く。
 今日は和食の席が用意されていると聞いていた。

(そういえばお座敷だったらどうしよう。着物で正座はキツイ)
 早速令嬢らしからぬ焦りを覚える。

「宇賀地さん、お待たせして申し訳ありません」
< 12 / 160 >

この作品をシェア

pagetop