身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
 よそ行きの声を出す伯母に続いて個室に入る。
 そこは窓から庭園を臨むことができる趣のある空間で、すでに先方は席に着いていた。

 よかったテーブル席だったと安心したのもつかの間、立ち上がってこちらを迎える男性の姿を見て、結乃はポカンとする。

(え、ちょっとまって。あの写真、手を加えてたんじゃなかったの?)

 一応事前に写真は見せられた。しかしあまりに現実離れしたイケメンだったので『きっとお見合い用にデジタル技術を駆使していろいろいじったのね』と思いこんでいた。

 しかし目の前に立つ彼、宇賀地耀の容姿は写真の印象より格段に整った容姿をしていた。

 百八十センチはあると思われる高身長、たるみなど一切無いと思われる逞しい体躯を高級そうな濃紺のスーツが包んでいる。
 通った鼻筋と意思が強そうな目が男らしい印象。顔に乗るそれぞれのパーツが完璧に配置されている。

「いえ、今日はありがとうございます」
 引き締まった口元から出てくるのは低く落ち着いた声。これぞ大人の男性といった雰囲気を漂わせている。
 
 思わず固まってしまった結乃は伯母の咳ばらいで我に返る。

(しまった、つい見とれてた!)
「あっあの……」
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