身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
 シンとした部屋に結乃の声が吸い込まれていく。

 これまでも何度もこうして帰ってきていたのに、耀がいない現実に寂しさが募る。
 彼とはスマホで安否確認のメッセージのやりとりをしているが、時差もありゆっくり話せていない。

 話をしたい。ぎゅっと抱きしめられたい。なんて贅沢になってしまったんだろう。

「会いたいな……耀さんの作る美味しいごはんも恋しい……」

 溜息をつきつつ、リビングボードの上にあるハシビロコウのぬいぐるみを手に取る。
 以前動物園に行った時に耀が買ってくれたものだ。

(実家のこともまだ話せていない。耀さんが帰ってきたら、ちゃんと話して……)

「私の気持ち、告白しようかな……うん。好きなんだからいいよね」

 両手にのるほどの大きさの目つきの鋭いぬいぐるみに話しかける。

 耀はどう思うだろう。彼も自分と一緒にいてもいいと思って受け入れてくれたらこの先も夫婦でいられるかもしれない。

 この年になって女子中高生のようにドキドキしているなんて。
 むしろそれよりも自分の恋愛戦闘能力は間違いなく低い。しかも告白相手は”夫”というおかしな状況だ。
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