身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
 ぬいぐるみを手に悶々としていると、静かな部屋にインターフォンの音が鳴り響く。

「わっ!」

 完全に気持ちが乙女に飛びかけていた結乃はぬいぐるみを戻し、慌てて応答した。

「はい、宇賀地です」

 マンションの女性コンシェルジュの見知った顔が画面に表示される。

『宇賀地様、奥様にお客様が見えています。いかがなさいますでしょうか』

 来客の予定はなかったはずだ。不審に思いつつ確認する。

「お客様……どなたでしょう?」

「嵯峨亜希奈様とおっしゃっています」

(え……亜希奈ちゃん? なにかあったの?)

 従姉妹がマンションまで来ていると聞いて結乃は驚く。

「わかりました。ラウンジにお通し頂けますか?」

 結乃はマンションの共有スペースであるラウンジで彼女と会うことにして、慌ててロビーに向かった。

 ラウンジは1Fのロビーの奥まった場所にある。
 応接セットのソファーに亜希奈が足を汲んで座っていた。

 有名ブランドの服とバッグ、髪の毛はメイクも完璧な三歳年上の従姉は相変わらず綺麗だ。

 結乃の姿を見止めると座ったままにっこりと笑って口を開く。
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