身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
「結乃ちゃん、久しぶり。結構いいマンションに住んでいるのね。本当は部屋に入れて欲しかったんだけど」

「亜希奈ちゃん、どうしたの? 何か困ったことでも」

 彼女は俳優志望の若い男性と恋に落ち、見合いが嫌で嵯峨家を出て行ったはずだ。
 実家となにかあったのだろうかと心配になる。

「さすが、宇賀地家の嫁ともなると他人を思いやる余裕ができるのね」

 亜希奈は蔑むような視線を結乃にむける。

「ねぇ、結乃ちゃん。宇賀地さん私にくれない?」

(え……?)

 亜希奈の信じられない言葉に理解が追いつかなかった。

「……なにを、言ってるの?」

「ごめんなさい、違ったわ。彼、もともと私と結婚するはずだったから、私に返して欲しいの」

 亜希奈はまったく悪びれる様子もない。

「ちょっと待って、どういうこと? 亜希奈ちゃんは――」

「彼のこと気にしてるの? そんなの別れたわ。イケメンだから好きだったけど、やっぱり一緒に暮らしてみて無理ってわかったの。だって自由に海外旅行もショッピングもできない生活なんて耐えられないわ。冷めちゃった」

「だからって。もう耀さんと私は結婚してるの。そんなの許される訳が」
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