身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
「あなたがついて行ったって宇賀地さんに恥をかかせるだけよ。そんなの向こうだってわかっているわ。私の方がふさわしいの。あるべき姿に戻りましょう。身の丈にあった相手と結婚した方が幸せなの」

 だから、身代わりはおしまい。亜希奈はそう言いおいて帰っていった。


「宇賀地様、顔色が悪いようですが」

 亜希奈が去ったあと、ラウンジのソファーにひとり座り込んでいた結乃はコンシェルジュの女性が声を掛けられ我に返る。

「……あ」

「お加減が悪いようでした病院に連絡いたします」

「ありがとうございます。大丈夫です。ちょっとぼんやりしてただけで」

 心配してくれる彼女にお礼を言って、結乃はエレベーターで部屋に戻った。

(亜希奈ちゃん、一方的に言いたいことだけ言って帰った……そうところ、昔から変わっていないな)

 さきほどまで恋に浮かれていたふわふわとしていた気持ちは亜希奈の登場で完全に吹き飛ばされ、跡形もなくなってしまった。

 結乃は簡単な夕食を作った。
 こんな時でも食事をとろうとする自分に苦笑する。でも、ちっとも美味しく感じない。
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