身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
 亜希奈の話はにわかには信じがたい内容だった。嘘をついている可能性もある。
 しかし何より耀にふさわしくない、恥をかかせると言われると反論ができなかった。

(私は英語もしゃべれないし、教養もない。社交に出れる華やかさもない。耀さんが連れて行きたくないと思っても無理はないかもしれない)

 アメリカ赴任について耀が黙っていたということは、結乃を連れて行くつもりはないということだろう。

 最初の予定通り、耀は次期社長に指名されて、結乃はお金をもらい結婚生活は終わる。
 そして亜希奈が妻となってアメリカに行く。

 耀なら亜希奈のことも妻としてきっと大切にするだろう。

 この家でふたりでしばらく過ごした後、アメリカに渡り新生活を始めるのだ。

(……辛すぎる。ダメだ。落ち込むのは耀さんに確認してから。電話じゃなくてちゃんと顔を合わせて話をしたい)

 それまでは勝手に決めつけるのは止めようと必死に言い聞かせたものの、寝室のベッドの中で思い出すのは亜希奈の言葉だった。

――『身の丈にあった相手と結婚した方が幸せなの』

(……幸せって、何なんだろうな)
< 138 / 160 >

この作品をシェア

pagetop