身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
 亜希奈は贅沢ができない生活は幸せじゃないという。
 それなら、彼女と同じように裕福な実家を捨てて父の元に走った母、そしてその母と結婚した父は不幸になったのだろうか。

 抱きしめるには小さいぬいぐるみを潰さないように抱き込みながら、結乃は朝方まで眠りにつくことができなかった。


 早速と言うべきか、それから三日後の土曜日の午後、結乃は嵯峨家に呼び出されていた。

 耀が帰って来るのは明日なので、せめて明後日以降にしてもらいたかったが聞き入れて貰えなかった。

 広いリビングで伯母と亜希奈と対峙する。家長である伯父は不在。
 おそらくゴルフとでもいいつつ愛人の所に出かけたのだろう。相変わらず家のことは我関せずのようだ。

 唯一の味方である巧巳は大阪にいる。そもそも最近はこの家に滅多に寄り付かないらしいが。

「亜希奈に話を聞いたでしょう? そういうことだから悪いけど身を引いてちょうだい」

 伯母は娘が目を覚ましてこの家に戻ってきたことが嬉しくて仕方ないらしい。随分にこやかな顔をしている。

「伯母さん、耀さんに何も言わず出て行くことはできません」
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