身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
 促された亜希奈は立ち上がり、にっこり笑う。取り繕った笑顔は良家の令嬢そのものだった。

「母さん、姉さんも何を言ってるんだ。宇賀地さんは結乃ちゃんと結婚してるのに」

「巧巳は黙っていなさい。そんなものどうにでも出来るのよ」

 伯母の言葉に巧巳は悲痛な面持ちになった。

「母さん、いいがけんにしてくれ。これ以上結乃ちゃんから何も奪うな!」

 今まで従順だった息子の強い言葉に伯母は驚いている。

「巧巳、何を……」

「嵯峨さん、妻の為にありがとう」

 耀は巧巳に声を掛けたあと、再び伯母に視線をやった。

「まず最初に言っておきます。私の妻はここにいる宇賀地結乃で、これからも変わることはありません。――何があっても」

「耀さん……」

 力強い声が胸にしみわたる。張りつめていた心が緩み体の力も抜けそうになるが、何とか両足で踏ん張る。

「で、ですが。結乃は育ちが悪くて、相応しくないかと」

「そうよ。結乃ちゃんの素性はボロ家の写真を付けて宇賀地本家に送ってあるわ!」

「そんな……」
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