身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
 別の所に行きかけた結乃の思考を戻したのは伯母の声だった。

「結乃、あなた恩をあだで返そうというの? 私が援助しなければ大学もいけない貧乏人だったじゃない」

「伯母さん、それは……」

 確かに伯母が出してくれたら大学を卒業できたのだ。そこに関してはずっとありがたいと思っていた。
 しかし耀は思いもよらないことを言った。

「結乃、金のことで君がこの家に感謝することも負い目に感じることもない」

「どういうことですか?」

「湊」

 耀は少し開いたままの扉の方に声をかける。

「失礼します」と入って来たのは耀の秘書、湊だ。いつの間にか部屋の外で控えていたらしい。

「湊さん」

「結乃さん、僕らがいない間に散々な目に合いましたね。でももう大丈夫ですから」

 すると湊は表情を真面目なものに変えた。

「僕は宇賀地専務の専属秘書の湊と申します。結乃さんと嵯峨家の関係について不可解なところがあっていろいろ調べさせてもらいました」

「調べた? 何をでしょうか。不可解な所なんて無いはずです」

 伯母は眉を顰める。
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