身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
 湊は書類の入った茶封筒をヒラヒラとさせた。

「巧巳、あなたお母さんを裏切ったの!?」

 取り乱す母に対して巧巳は落ちついていた。

「裏切ってなんかいないさ。母さんのしたことは犯罪なんだよ。宇賀地さんは母さんと結託して遺言を改ざんした弁護士にたどり着いて罪を認めさせている。結乃ちゃんの後見人になったのは、ご両親が亡くなった結乃ちゃんがそのことに気付かないように監視するためだったんだろう?」

 息子の言葉が真実をついたようだ。その場全員の視線が注がれる中、伯母は悔しさを滲ませしばらく沈黙した後、観念したのか口を開いた。

「……美佐子が悪いのよ。子供の頃から人に取り入るのがうまくて誰からも好かれて、両親に可愛がられるのもあの子ばかり。わがままで家を出たくせに財産をせしめようなんて冗談じゃないわ。嵯峨家の財産はぜんぶ私のものなのよ!」

 結乃は初めて伯母の本音を知った。
 もしかしたら結乃を通して妹への複雑な思い……考えたくないけれども憎しみの感情を晴らそうとしていたのではないだろうか。
 
 そう思うとやるせなさに胸が詰まり結乃は何も言えなくなってしまった。
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