身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
 急に恥ずかしいというか、こそばゆい気持ちが湧き起こり頬が熱くなる。
 耀も同じなのか咳ばらいをすると「話をしよう」と結乃の手を取った。

「赴任の話は上がっている。渡米前に次期社長と指名されることも。しかし正式に決まった訳ではないし、おそらく来年以降になる」

 リビングのソファーに並び座りながら耀は結乃に話し始めた。

「不確かな情報を都合よく捻じ曲げたんだろうな、君の伯母と従姉は本当にたちが悪い」

「正式じゃないから耀さんは私にその話をしなかったんですか?」

 昨日から引っかかっていたことを結乃は尋ねた。

「アメリカに行くとなると、結乃はお祖母さんと離れなきゃいけなくなる。不確定なことで結乃を悩ませたくなかった」

(耀さんは私を連れて行く前提で考えてくれていたんだ……)

 その上で結乃が祖母を大切に思う気持ちを慮ってくれていたのだ。ホッとして心が軽くなる。

 しかし彼が続けたのは意外な言葉だった。

「でも、それは建前で、本当は怖くて言い出せなかったんだ。次期社長に指名された上、海外赴任になると伝えたら『じゃあ、私の役目は終わりですね』と君に別れを切り出されるかもしれないって」
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