身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
「耀さんがそんなこと思ってたなんて……」

 耀はフッと溜息をつくと自嘲気味に笑った。

「俺は今まで自分が強い人間だと思っていた。でも、君に関する事だと途端に情けなくなる」

 いつでも冷静沈着で自信に溢れている大人な彼が、弱音のようなものを吐くのを初めて聞いた気がする。
 でもその本音が嬉しくてしかたない。

「私も、怖くて不安でした。耀さんはもう私を必要としないんだろうなって。もう一緒に暮らせなくなると思うと辛かった……」

「すまない。俺がちゃんと伝えていなかったからだ」

 耀は座ったまま結乃に体を向ける。華奢な両肩に耀の大きな掌がのった。

「結乃、愛してる。これからもずっと俺の妻でいてほしい」

「耀、さん……」

 耀の真っ直ぐな言葉が結乃の心を温かく満たしていく。

「私も耀さんの奥さんでいたい……でも、大丈夫でしょうか。ご存じの通り私ド庶民で、食い意地張っているし、落ち着きがなくて。何より初対面の人にタンカ切っちゃうし」

「そんな結乃だから俺は好きになった」

 耀は目を細め、愛しげに結乃の頬を撫でた。

「俺の隣で笑ってくれているだけでいい。君が笑顔でいる以上に大切なものはない」
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