身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
 今更お金はいらなかったので管理については耀に任せているが、交通安全にかかわることや、親を亡くした子供を支援する事業に寄付できたらいいと思っている。

 嵯峨家の当主は巧巳となり嵯峨建設の経営も彼が引き継いだ。

 経営の才はあるがまだ若く経験の浅い巧巳を支援すべく、宇賀地ホールディングスから優秀な人材がサポートに入っている。
 巧巳は生き生きと激務をこなし、社内の改革を進めているらしい。

「結婚式の写真、最後にここでご両親とお祖父さんに見せたかったのか?」

 耀は手に持った写真立てを結乃に手渡す。

「はい。そのつもりだったんですけど、必要なかったかもしれません」

 結乃は受け取った写真を愛し気に眺めてからもう一度部屋を見回す。

「この家があってもなくても、家族の思い出も、亡くなった人たちが私を見守ってくれているのも変わらないって思えるようになったんです」

 これからは耀との新しい人生を歩むのだ。悲しみを隠さなくていいと受け入れてくれる夫と共に。

 温かな日差しが差し込む部屋で耀に肩を抱かれながら、静かな気持ちで結乃はこの家との別れを告げた。

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