身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
 家を後にしたふたりは、祖母に会うためマンションまで歩くことにした。

 ふたりで手を繋いで歩いていると、突然耀がふっと笑う気配がした。

「どうかしましたか?」

「さっきの写真で思い出したんだが、披露宴の時、結乃は食事を何ひとつ残さず、デザートまで平らげてたな」

「う……美味しかったです」

 最高級ホテルの豪勢な料理が目の前に並ぶ中、結乃に残すという選択肢は無かった。
 介添えに付いてくれたスタッフにも『こんなにしっかり召し上がる花嫁様は初めてです』と感心していた。もしかしたら食い意地に呆れたのかもしれないが。

「いいんです。”食べ物を大事に”は山崎家の家訓なんですから」

 少し拗ね気味に彼を見上げる。

「そうだな、これからその家訓は宇賀地家で引き継いでいこう」

 こちらを見る耀の目は優しい。

「さっそく、今日は何を食べましょうか。おばあちゃんに会った後、スーパーに寄って帰りましょう。今日は私も手伝います」

 相変わらず耀は時間さえあれば結乃に食事を作る。自分の作った料理を妻が頬張るのを見るのが好きらしい。
 でも最近は一緒にキッチンに立つのも楽しいと思ってくれているようだ。
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