身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
(もしかしたら宇賀地さんの趣味が変わってて、ちょっとは私のこといいなって思ってくれるかもしれない……いやさすがにそれはないな)

「結乃さんは今、お仕事をされているとか」

「はい、社会勉強のため、あえて家業とは別の分野の企業に勤めております」

 耀からの想定内の質問に準備していた回答をする。
 本当は社会勉強なんて甘っちょろいものではなく、厳しい就職活動のなか、やっと採用された会社なのだが。

「そうですか、勉強熱心でいらっしゃるんですね」と返されたが、やっぱり彼の感情は見えないのだった。

 その後も極力ボロが出ないように控えめな会話を続けたが、話の主導権は前のめりぎみの伯母が握っていた。

「宇賀地さんは、次期社長としてとてもやり手だって伺っておりますわ。先日も宇賀地さん主導で買収したアメリカ企業の食品加工技術を使ってかなりの利益を上げているとか」

「いえ、僕はまだ一事業の担当役員でしかありません。しばらくは社長の父について勉強の日々です」

(わあ、やっぱりすごい人なんだな……)

 社長の息子とはいえ三十二歳で担当役員、結果も出しているなんてすごいなあと感心しつつ、先程から結乃の関心は目の前の料理に引きよせられていた。
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