身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
 なぜですか?とは怖くて聞けない。理由は分かるからだ。

 客観的に考えてこんなに見目麗しく社会的な地位がある大人の男性に自分が釣り合うとはとても思えない。

(代役が私みたいに地味な女じゃなくて、すごい美人とか才女とかだったら話は違ったかもしれないけど)
 健闘虚しくどころではなく、リングにも上がっていない感覚だ。打ちひしがれつつも疑問が湧き起こってきた。

「なぜお断りするのがこちらなのでしょうか?」

 彼が自分を気に入らないのならすっぱりそちらから断ってくれればいいのに。

「元々祖父の勝手でお願いした縁談をこちらから断ったとなると面目がつぶれるのは嵯峨家でしょう。私は祖父の意向がなければ受けなかった話なので、気にせず断ってくれて構わないということです」

 耀の声色も表情も『そんなこともわからないのか』といっているような気がする。

(……あれ? この人割と失礼な感じがするんだけど)

 さきほどまで全くつかめなかった彼の感情に初めて触れた気がする。
 残念ながらマイナス方向にだけれど。

 でも、何を考えているかわからないよりよっぽどいい。
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