身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
(なるほど、よっぽどこのお見合いが面倒だったのね。でもさっきまではお互いの対面を気にして取り繕っていたってことか)

 ならばと結乃も体の力を緩め少しだけ本音を明かす。

「たしかにそうなんですが、こちらから、というか私の方から断るというのは難しいかと思います」

 どうしても宇賀地家と縁続きになりたい伯母に、結乃から頼んでも断ってくれるわけがない。
 逆に宇賀地家から断られれば諦めるしかないだろう。

 まあその時自分は伯母に相当役立たずとなじられるだろうけどそれは甘んじて受けよう。

「嵯峨家の対面は気にしないということですか?」

 耀は確認するように問う。

「それは仕方ないと思っています。従姉妹が逃……私が代役になった時点で嵯峨家の落ち度ですから。もうすっぱり断っていただいて大丈夫です」

 結乃はつとめて明るく答えた。

(お見合いの席の直後にこうして若いふたり同士でどちらから断りを入れるかの話し合いをしてる状況とは……)

 普通はお庭を愛でながらふたり並んでゆっくり歩き、お互いはにかみながら趣味や休日何をしているかを話したりするものではないのか。
< 20 / 160 >

この作品をシェア

pagetop