身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
 なぜ伯母はそんなに疎ましい姪の後見人になったのだろうかと不思議に思うほどだった。

 三歳年上の従姉の亜希奈(あきな)もそんな母親と共に結乃を蔑んだ。
 婿養子である伯父は立場が弱く伯母に言われるがまま。
 結乃に渡されるのは最低限生活にかかる費用のみ。離れて暮らす祖父母の生活の足しにするためアルバイトしたいと申し出ても『嵯峨家の人間が金に困っていると思われる』と認められなかった。
 
 伯母たちの生活は派手で、頻繁に海外旅行やパーティに出かけていたがもちろん同行したことはない。

 ただひとり結乃に優しくしてくれたのがふたつ年上の従兄の巧巳(たくみ)だったが、彼は京都の大学に入ると家を出て独り暮らしを始めたため、あまり帰ってくることがなかった。

 両親を突然亡くした上、嵯峨家で冷遇された高校時代。
 それでも結乃は卑屈にならず前を向こうと生きてきた。

 元気でいることで祖父母、そして天国の両親を安心させたかった。そう思わないと孤独で押しつぶされそうだったのだ。
 
 殺伐とした生活が終わりを告げたのは結乃が大学生になって少しした頃、きっかけは山崎の祖父が病気で亡くなったことだった。
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