身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
 もうすぐ二十歳になろうとしていた結乃はひとりになってしまった祖母のために山崎の家に戻りたいと申し出た。

『だったら、もう二度と嵯峨家とは関わり合いにならないで』と伯母は言い、思いの他あっさりと受け入れられ結乃は懐かしい家に戻ることができた。

 金銭的に余裕は無いが、やさしい祖母と暮らせるようになって結乃は心からホッとしたのだった。

 その後、言われた通り嵯峨家とは関わりを断っていたのに。

(まさか亜希奈ちゃんの代わりにお見合いすることになるとは……)

 伯母に呼び出されたのがつい一週間前。四年ぶりに嵯峨家を訪問した結乃はそこでいきなり見合いに臨むように命じられた。

「まったく、亜希奈があんなことにならなければ」
 思い出したように伯母が溜息をつく。未だに諦めきれないようだ。

 そもそもこの縁談は伯母の娘である結乃の従姉妹、亜希奈に用意されたもの。

 相手は宇賀地耀という男性で三十二歳。食品事業を中心に外食サービスも展開する国内有数のグループ会社、宇賀地ホールディングスの社長の長男。いわゆる御曹司である。
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