身代わり婚だったのに、極甘愛で満たされました~虐げられた私が冷徹御曹司の花嫁になるまで~
 彼の祖父である宇賀地グループの会長が”生まれも育ちも良い令嬢”を孫の嫁に迎えたいという強い意向を持っており、嵯峨家の令嬢亜希奈との縁談が持ち上がった。
 
 その話が出たのが今から二年前。しかし当人の耀は自ら陣頭指揮をとっている外食サービスの新規事業展開で忙しいからと亜希奈と会おうとせず、その後ものらりくらりと理由を付けて避け続けていたらしい。

 しかし、いい加減にしろと祖父にせっつかれ、正式にお見合いをすることになったようだ。

(きっと、本人はお見合いに気が乗らないんだろうな。おじいさんに押し付けられたお見合いなんて断りたいよね)

 他人事のように思いを馳せる。残念ながら生まれてこのかた交際経験はない結乃だが、自分だって好きになった人と幸せな結婚がしたいと思っていた。
 思っていたのだが。

「あなたにも一応嵯峨家の血が流れているんだから。上手くやって頂戴」
 伯母の声は相変わらず冷たい。
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