冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う「その後のお話し」
喫茶店に入り、コーヒーと紅茶を注文し少し口にしてホッと一息付く。
司は莉子の様子を伺い見るが、なんら変わった様子はない。

「英語のお勉強会はどうでしたか?」
莉子がにこにこと話しかけてくる。

「ああ、総勢20人は集まっただろうか。まさかそんなに集まるとは思わなかったから、もっとちゃんと下準備をしておけば良かったと後悔した。」

何事でも真面目に取り組もうとする司を誇らしく思いながら、
「第2回目はあるのですか?」
と莉子が聞く。

「ああ、また来週にやって欲しいと頼まれた。」

「では、その時は私もお手伝いとして参加させて頂けませんか?」
司の先生振りをどうしても見たくなって、莉子は少しおねだりをするような目で司を見る。

「そうだな。…じゃあ、次回はアシスタントとしてお願いするよ。その前に個人レッスンしよう。」

「嬉しいです。」
莉子は本当に嬉しそうに微笑んだ。

「なぁ、莉子。図書館で誰かに会ったか?」

モヤモヤした気持ちを早く消し去りたいと、司は莉子に直接尋ねる事にする。

何しろ、先程から時間差で入って来た英国風の紳士がこちらを見ている気がしてならないから…。

「…この写真集を見ていたら、外国の紳士に話しかけられました。とても、日本語がお上手で少しお話しをしました。」
机の上に置いた借りて来た本を指差し、莉子が話してくれる。

「そうか…。その人は金髪で俺と同じくらいの背だったか?」
司は目を付けていた男の容姿を莉子に伝える。

「そうです。お知り合いですか?お名刺を頂きました。」
莉子は帯の間に挟んでおいた名刺を取り出し、司に見せる。

ブライアン•エバンス…

その名に覚えは無かったが、莉子に変な虫が着いた事は一目瞭然だ。
司は莉子に心を読まれないように笑顔を作り、
「そうか、楽しかったか?」
と、探りを入れる。

紅茶を美味しそうに一口飲んだ莉子は、
「いろいろ質問されて、ちょっと緊張してしまいました。」
と、首を縮める。

「そうか…。何か、甘いものでも食べるか?」
司はそれ以上は聞きたくないと、気持ちを切り替え莉子にメニューを渡す。

「お昼も近いですし…。」
莉子はメニューに目を通しながらも、少しの罪悪感と戦っているようだ。

「全部食べられなかったら半分もらう。」

その言葉を聞いてパッと晴れた顔になり、
「では、このチョコレートケーキを食べてみたいです。」
と、可愛い顔を見せてくれるから、少しだけ気分が上がった司は、注文したチョコレートケーキを2人で仲良く分け合い食べた。
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