冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う「その後のお話し」
喫茶店を後にして部屋に戻って来ると、司は疲れたようにソファにストンと腰を下ろすから、莉子は心配になって来て、

「お昼までまだ時間がありますし、少し横になって休んで下さい。」
と、声を掛ける。

すると、こっちに来いと言う風に手招きをするから、そっと近付きソファに項垂れて座る司の前に立って、目線の少し下にある司のつむじを見つめる。

何となく母性のような気持ちが湧き出て来て、そっとその頭を抱きしめて、よしよしと子供をあやすようにサラサラの髪を撫ぜてみる。

司の手が背中に周り抱きしめられるから、ドキンと胸が高鳴る。

「あ、あの…。」
意図せず胸元に司の顔が埋まる体制になって、恥ずかしくて頭の中がパニック状態になる。

すると、司がヒョイっと軽々しく莉子を抱き上げ、ベッドにコロンと転がされる。

えっ?えっ⁉︎と思っているうちに、司の影が覆い被さって来たかと思うと組み敷かれて、莉子の唇に甘い口付けを落としてくる。

「っ……⁉︎」

びっくり顔で固まった莉子に、
「煽って来たのは莉子の方だ。」
と、司に言われてしまう。

煽ったつもりは全くなくて…
それでも、何度も降り注ぐ口付けに息も心拍も乱れてしまう。

こんな明るい昼前に…そう思うだけで恥ずかしくて真っ赤になってしまう。

「ま、待って…待って、下さい…。」
息を吐きながら司の動きをどうにか止める。

「…要望があるなら…今なら聞く。」

「えっと…明るくて、恥ずかしいので…カーテンを…。」
言い終わるか終わらないかの間に、司は素早く部屋中のカーテンを閉めて戻ってくる。

「後は?」

「あっ…あの、背中の傷に、障るのでは…?」
まだまだ本調子では無い筈だ。頭の傷は大丈夫そうだけど、手のひらだって痛いはず…。

と、莉子は司の身体を心配するのに、

「大丈夫だ。それよりも、抱きたい気持ちを抑える方が精神的にどうかと思うが…?」
言いくるめられて返事に困る。
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