冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う「その後のお話し」
「嫌なのか?」
単刀直入に聞かれれば、決して嫌な事では無い。
ぶんぶんと首を横に振る。

ただ、こう言う事は夜でなければと勝手に思い込んでいたから、突然の出来事に戸惑ってしまう。

「じゃあ、他に問題が?」

「あ、あの…シャワーだけでも…。」

「却下。」
司に容赦無く却下されて目を見開く。

「もう、いいか?」
いつだって、莉子の気持ちを聞いてくれるのにシャワーだけは駄目だなんて…。
その気持ちを引きずっていると、こっちを見てと言う風に両手で頬を押さえられて、目と目が至近距離で合う。

吸い込まれそうな鋭く綺麗な眼光に、数秒見惚れてしまう。

司は莉子の頭のかんざしをそっと外し、サイドテーブルに置く。
後ろで束ねていた髪はサラリと下ろされ、気付けば飾り帯は器用な彼の手に寄って取り外されていた。

手と手を絡まされて、再び優しく激しく甘く、唇を奪われる。

そこからは、まるで大きな波に流されるように、心が揺らされて流されて、息絶え絶えに呼吸さえも奪われて、ただ…彼の優しい手に寄って溶かされ、甘やかされて、息も忘れるくらい抱き合う。

「莉子、愛している。俺から離れないでくれ…。」
司の声と鼓動だけが聞こえてくるから、莉子は必死にその頑丈な肩に掴まって、

「愛しています…決して、離れませんから…。」
と、意識を手放す手前に、なんとか伝えられた。
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