冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う「その後のお話し」
(司side)

これは…嫌われてしまう案件だろうか…。

隣で小さく寝息を立てて眠る莉子の寝顔を見つめて考える。

晩餐会の放火事件から、命からがら生きながらえて3週間は経っただろうか。

莉子が退院してからバタバタと、寝る暇も惜しみ忙しく仕事に飛び回り、何とかイギリス行きの船に乗り込む事が出来た。

ホッとしてやっと得た安眠と幸せな日々。

日がな一日、何をするでも無く、2人でこの部屋に閉じこもったとしても、誰にも咎められる事は無い。

強いて言えば、この後昼食を一緒に食べようと約束した正利君達に、なんて連絡をしようかと考えながら暇を潰す。

スヤスヤと眠る莉子の頬に涙の跡を一筋見つけ、ズキンと心が痛む。

痛い思いをさせてしまったのだろうか…
これでも華奢な莉子を壊さないよう、大事に細心の注意払って抱いているつもりだ…。

そっと親指で涙の跡を拭き消す。

それにしても…俺の妻が可愛すぎるいけないんだ。ほんの少しの間でも、1人でいるだけで変な虫が直ぐに付く。

それに、無自覚に可愛さを振り撒いて俺を煽る…。

はぁーーっと俺は深いため息を吐き、

素直に謝ろう…何事も先手必勝だからな…。
と思う。

数分後、そんな事を考えながら莉子の寝顔を見ていると、ピクッと瞼が揺れるから、それだけで嬉しくなって笑顔になってしまう。

莉子の乱れてしまった髪をそっと耳に掛け、ソワソワと目覚めを待つ。

薄く開き始める瞳に1番始めに写りたいと、その時を待つ。

「…司さん…。」
寝起きに名前を呼んでもらえただけで嬉しくなって、微笑み彼女の頬にそっと手のひらを乗せる。

「大丈夫か…?ごめん…痛い思いをさせたのなら、申し訳なかった。」

労りと反省を込めて素直に謝ると、ふわっと笑って

「大丈夫ですよ。」
と、俺の首元に抱きついて来るから、もうそれだけで身体が勝手に反応しそうになる。

俺はそれを自制しながら、何事もなかったかのようにそっと彼女を抱きしめる。
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