冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う「その後のお話し」
段々頭が覚醒したのか、
「あっ…。」
と言って、莉子離れてしまう。

「…背中の傷…大丈夫ですか?見せてください。」
慌てて心配するから、俺はフッと笑い莉子の頭をそっと撫ぜる。

「大丈夫だ、痛くも痒くもないから。」
と安心させるのにそれでは安心出来ないのか、
「見せて…。」
と、毛布で身体を隠しながら起き上がってしまう。

俺も仕方なく、素直に従い身体を起こして背中を向ける。

莉子が撒かれている包帯をくるくると外して、傷口を確認している。

「少し血が滲んでいます…どうしよ…。」
慌てて枕元に置いてある消毒液を引き寄せて、傷の手当をしようと莉子が動き出す。

そのよく動く手元を見ているだけでも、邪な思いを抱き始めてしまう俺だから、

「風邪を引くといけない。先にシャワーを浴びた方が良い。」
と、治療を拒み莉子を抱き上げ、浴室に連れて行こうと立ち上がる。

「駄目です、治療が先です。」
と、頑な意思を見せてくる莉子を仕方なく、先程まで来ていた着物を拾い肩にかけてやる。

そこで莉子はハッとして、ほんのりと頬を染めながら、とりあえず長襦袢だけ素早く着付けて、直ぐに俺の元に戻り背中の傷の手当をしてくれた。

「痛くないですか?沁みませんか?」
と、俺に気遣いながら消毒を塗りガーゼを貼り替え、新しい包帯でぐるぐると巻き直してくれた。

「ありがとう。そろそろ腹は減らないか?今ならまだ、司君達の食事に間に合うが、どうする?」
彼女に全権を委ね聞くと、置き時計をチラリと見て、

「直ぐに支度をします。」
と、いそいそとシャワーを浴びに行ってしまった。

取り残された俺は、少しの間彼女が消えていった扉を見つめ、邪心を取払う事に集中する。

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