冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う「その後のお話し」

「すごいな。自然の雄大さには感服する。
こう言う景色を見ると人間は、なんてちっぽけなんだろうって思うな。」

壮大なイルカショーが終わった後、人々はそれぞれ静寂を取り戻し、元行た場所へ戻って行く。

亜子と正利君も先にサロンへと戻って行ったが、莉子はイルカが去って行った海原をずっと見下ろしたままだがら、しばらく寄り添い側で見守る事にする。

「少し、いいですか。」

不意に後方から声をかけられて、理子と揃って後ろを振り向く。と、そこに、例の金髪の英国紳士が立っていた。

莉子は少し驚いたような様子で、それでも英国風にスカートを持ち上げ軽くお辞儀する。

その英国紳士も帽子を取り、軽く理子に会釈をする。

そして、俺に向き合い手を差し出し、
「はじめまして。私ブライアンと申します。以前奥様とは少しお話をさせて頂いた者です。」
と、話しかけて来る。

だから俺も冷静を装い、差し出された手を握り返しながら、
「始めまして、長谷川 司と申します。」
と一歩前に出て莉子を背に守りながら、握手を交わす。

「それにしても、先程のイルカは素晴らしかったですね。僕も何度か船には乗っているが、こんな光景は初めて見ました。」

フレンドリーに先程の光景を話して来るその日本語は滑らかで、風貌とのギャップにいささか驚く。

「日本語がお上手ですね。どちらで習得を?」
俺は彼の全貌を探るべく、何気なく質問をする。

「大学で英語を教えておりました。日本語は難しいが興味深い。貴方も、英語をマスターしているようですね?なんでも日本人向けの英会話を教えているのだとか。」

相手も俺の事を探ってくる。

「人から頼まれまして少しばかり。自分はただのビジネスマンです。」
笑顔を交えながら謙遜してみる。

「そうなんですか。イギリスには旅行で?」

「いえ、仕事の買い付けが主です。」

「そうなんですね。お若いご夫妻なので、新婚旅行なのかと思っておりました。イギリスは初めてですか?」

「いえ、1年ほど前まで数年滞在しておりました。今回は数ヶ月の予定ですが。」

俺は彼の質問に淡々と返す。

「若い御婦人が乗っているのが珍しくて、お声を掛けさせて頂いたのですが、お美しい方ですね。」
莉子の事に話が及び、いささか警戒を強くする。

「新婚ですので、我が社の社長が考慮してくれたんです。数ヶ月離れる事になりますから。」

「なるほどそれは羨ましい限りだ。
政略結婚か何かですか?どこかのご令嬢ですか?」
矢継ぎ早に莉子へ対しての質問が飛ぶ。
俺は少し怪訝に思いながら、それでも丁寧に答える。

「いえ。自由恋愛です。私が彼女を身染めたもので。家柄は関係なく、ただ側にいて欲しいと思ったんです。」
牽制する為、堂々とそう言ってのける。

それには少し相手も驚きを見せる。

莉子に何気なく視線を合わせると、驚きの目を見せ恥ずかしそうにはにかんでいる。
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