冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う「その後のお話し」

「日本人には珍しく、愛妻家なのですね。」

「彼女のお陰で今がありますから。私にとって特別な人なんです。」
自分の気持ちをこんなにも明け透けに話した事は今までなかったが、外国人相手と言う事もあり、幾分気持ちが解放的になっていた。

それなのに、この英国人は容赦無く莉子を口説こうとする。

「莉子さんは、活動写真はお好きですか?今夜、活動写真館でイギリスの喜劇が放映されるんです。ご一緒にいかがですか?」

背に隠したはずの莉子の顔を覗き込み、俺を目の前にして堂々とそう言うから、

「えっ…⁉︎」
それに驚いた莉子は、咄嗟に俺の腕にしがみ付き警戒を露わにして怯える。

「私は…夫と見たいので結構です…。」
不安な声で、それでもそうハッキリ言う。

『どう言うつもりですか?人の妻をなんだと思ってるんだ。』
英語で俺はそう言って、睨み付ける。

『では、お二人ご一緒にどうですか?喜劇はお嫌いですか?』

大した事ではない様な素振りで、そう俺を誘って来るから、これにははらわたが煮え返るくらいの怒りを覚える。

『ご冗談を。何を考え出るのか分かりませんが、失礼にも程がある。』

俺はそう言い放ち、莉子の手を取りその場を立ち去ろうとすると、

『以前、ある知り合いの日本人男性が、私に自分の妻を差し出し出来たので、日本にはそう言う文化があるのかと思っていました。』
その男はそう言い放つ。

莉子に対しても、日本人に対しても失礼この上ない。

『彼女を…日本人を蔑むのは金輪際辞めて下さい。そんな文化も風習も一切ない。2度と私達に近付くな。』
そう、捨てゼリフを吐いて、足早にその場を立ち去る。
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