冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う「その後のお話し」
いつの間に寝てしまっていたのか…
司がハッと目を覚ました時、暖かな毛布をかけられていた。

莉子はどこに行った?
寝起き直ぐに心配になるのは莉子の事。
司は辺りを見渡して、莉子が何処にもいないと分かると否やガバッと飛び起き、ウロウロと部屋中を探す。

「莉子?」
こんなにも置いて行かれた子供のような気持ちになるのかと、不安が途端に押し寄せて来る。

「司さん?起きられましたか?」
莉子の優しい声を聞いて振り返ると、バルコニーから部屋を覗く莉子の姿。

司は安堵して大股で莉子に近付き、ギュッと抱きしめる。

「少しは疲れが取れましたか?」
ふんわり笑って莉子もそっと抱きしめ返えす。

司のこう言うところが好きだと莉子は思う。

普段は凄く頼りになって、誰よりも揺るぎない正義感と信頼感で、全ての人を魅了してやまない人なのに、2人の時は途端に子供のような仕草を見せ、心配して過剰なほどに莉子を構う。

莉子の側に寄り添い離れないところとか、他人が近付くと威嚇して守ってくれるところが、まるで大きな大型犬、家に置いてきた秋田犬のリキのようだ。

「夕飯はどうした?」
時計を見れば8時前、少し心配になって莉子に聞く。

「部屋に運んで貰いました。一緒に食べたいと思って、まだ温かいと思います。」
莉子も食べずに待っていてくれたのだと、司は思い心を痛める。

「ごめん待たせて、腹減っただろ?」
莉子の手を引き2人用のダイニングテーブルに連れて行く。その椅子を引き、座らせる。

2人で食べる夕食は少し冷めていたけれど、とても美味しく感じられた。

船の旅は快適だったが、いつも他人の目を気にしていたから、そういったストレスが無く食べる食事はとても楽で楽しかった。

風呂に入れば久しぶり足が伸ばせるバスタブで、快適な事この上ない。

ただ、この家は広すぎる。
廊下を1人で歩けば莉子なんて迷子になってしまうだろう。

ああ、早く2人だけののんびりした横浜の洋館に戻りたいな…。

まだ、半年も過ごしてないあの洋館での日々が懐かしくなる。あの家だって、2人きりでは広過ぎるけど住めば都と言う事だ。

明日からの忙しい日々を思い、今夜は2人寄り添って深い眠りに着く。
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