冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う「その後のお話し」
そして司に抱き寄せられたままの格好で、そっと袂にしまっておいた1通の白い封筒を取り出す。

それは先程船に乗船した際、司から莉子への手紙だった。

ずっと気になっていたけれど、本人が読み終わったら破り捨て欲しいとまで言っていた。   

ドキドキしながら莉子はこっそり封筒の封を切る。

中には司の力強い字で書かれた手紙が、2通に渡り綴られいた。

こんな大事な手紙を破り捨てるつもりは更々ないけれど…。

ふぅーと深く深呼吸をして莉子は手紙を読み始める。

『拝啓 莉子様。

君がこの手紙を読む時には、きっとイギリス行きの船に乗っている頃だろうと思う。

半ば強引に連れて行く事を決めてしまった事、君はどう思っただろうか。俺のわがままだと思って許して欲しい。

君は俺には勿体無い程の女性で、世が世ならばきっと結ばれる事の無い2人だったのだと思うから、この奇跡に感謝したいほどだ。

君の笑顔をずっと絶やさず守り続ける事が、君の父上から俺に託された使命だと思っている。

君はいつまでも、その澄んだ心で真っ直ぐな瞳で、俺を照らし続けて欲しい。

君があの時言っていた、俺といると無敵だと言う言葉。
俺は君に返したい。
俺こそが君といるから無敵になれるんだ。

莉子のいない世界では、もう生きられないとさえ思っている事も、決して大袈裟ではなく本当の気持ちだ。

ずらずらと書きなぐってしまったが、結局伝えたいことはただ、

君をずっと変わらず愛している。

そばに居てくれてありがとう。

どうか死ぬまで、一緒にいて欲しい。

これだけだ。

追伸 どうか、読んだらすぐさま破り捨てて欲しい。

               長谷川 司』
   
これほどの恋文だとは思わず、心が震えるほど嬉しくて、目頭が熱くなって涙が溢れる。  

背中で寝ている司を起こさないように、そっと静かに涙を拭く。     

この手紙は、莉子にとって1番大切な宝物となった。
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