冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う「その後のお話し」
(司side)

美人は3日で飽きると言うが、全くそんな事はない。
毎日コロコロと変わるその笑顔や仕草が可愛くて、いつだって見ていたいし、出来る限り側にいたい。

華奢な莉子は触れれば壊れてしまいそうで、いつだって最善の注意を払い大切に扱っているつもりだ。


莉子と知り合い結婚して今まで、いろいろな事があったが、それでも変わらず笑顔を向けられれば心が踊るし、元気がなければたちまち心配になる。

このところは夏の暑さにも負けず、やたらと元気にしているから、逆にそれが少し心配だ。

夕飯時、家路に急ぐ足取りは軽やかだ。

今夜は冷たいプリンを手土産に買って来た。喜ぶ顔が早く見たい。

それなのに…
家に着けば、いつも玄関で出迎えてくれる彼女が居ない。そこに居るのはご主人様に吠えたたえる失礼な番犬のみだ。

それだけで、俺の心臓はドクンと乱れ彼女を探す。

灯りを付けまくり家中をくまなく探す。

台所から漏れる灯りを見つけ、足を踏み入れた途端、目に飛び込んで来たのは、床に転がる莉子だったから、俺は気が動転して彼女に近寄り抱き起こす。

「莉子…莉子!!」
何度か呼ぶが返答はない。
心拍を聞き脈をとり、どこか倒れる時に怪我はしていないかと手早く探る。
何ともないことが分かって一旦ホッとするが…。

額に手を当てれば若干の熱さを感じる。そっと抱き上げ1階にあるゲストルームへと連れて行く。

彼女の額を手縫いで冷やしながら、目が覚めるまで不安で仕方がない。なぜ気付いてやれなかったのか、不甲斐ない自分を悔しく思う。

何よりも誰よりも大事な妻だから、いつだって慈しみ労り毎日の無事を願ってしまう。


しばらくして、莉子が目覚めた第一声は何よりも俺が腹を空かせてないか、と言う心配だったから心が打ちひしがれる。

気付いてやれなくて申し訳なかったと懺悔する俺を、微笑みを讃えながら大した事ではないからと、大丈夫だと言う彼女の細い小さな手を握り締める。

台所に冷やしてあったスイカを食べやすいように小さく切って、莉子に食べさせる。
その間も、水分不足か夏バテか?いろいろ思案する。

そして忘れていた手土産のプリンを、玄関から持って来て、莉子の口にスプーンで運ぶ。

全部完食してくれてやっとホッとひと息吐く。
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