冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う「その後のお話し」
参道が残り100メートルとなって人力車が止まり、莉子と司は降りて歩く。

引きずるほどの白無垢の裾を片手に持ち、一方は司が変わらず繋ぎ続け誘導してくれる。

その後ろを大きな赤い蛇の目傘を掲げて、司の乳母の千代が続く。重たくないだろか?と、莉子が心配の目を向けると、満面の笑みを向けてくれる。

雅楽の音色の中、神殿前まで到着して莉子の緊張もいよいよ昂る。

目の前には5段ほどの階段…

先に親族達を通す為、司と莉子は階段下で司の両親と、兄妹達と一緒に並んで親族へ挨拶を交わす。

「初めまして。司の叔父の…。」
司の親戚達が初お目見えの莉子に挨拶をして階段を上って行く。

既に何十人もが通り過ぎ、いよいよ覚えきれなくなってくだ頃、あの赤い振袖の東郷昌子が近付いて来るのが見える。

司と側に控えている鈴木は目を光らせ、彼女が通り過ぎるのを万全な体制で見送る。

前後に昌子の両親がいるから、下手な事は出来ないだろうが…。

「初めまして、東郷 昌子と申します。私、子供の頃から司さんの許嫁候補にもなるほど親しくしてましたの。」

突然の威嚇に莉子は目が点になりながら、昌子が差し出して来る手を見つめ、

「初めまして、莉子と申します。これからどうぞよろしくお願い致します。」
他の親族と変わらず彼女にも丁寧に頭を下げて、差し出された手を握ろうと手を差し出すが、

不意に隣に並んでいた亜子が、スーッと近付いて来てその昌子の手を先に握り返すから、莉子はえっ?っと思い手を止めて亜子を見る。

「初めまして、莉子の妹の亜子と申します。
歳の近い方がいらっしゃって嬉しく思います。どうぞお見知りおき下さい。」
ハキハキとそう答える。

その瞬間に司もすかさず、莉子を守るように一歩前に出て昌子を先にと促す。

「私に許嫁がいた事など一度もありません。どうぞ先を急いで下さい。後ろがつかえますから。」

莉子が呆気に取られている間に、昌子は鈴木の誘導で強制的に莉子から距離を取らされ、仕方なしに階段を登って行く。

まだ、話し足りないとばかりにこちらをチラリと見て、莉子に鋭い目線を投げかける。

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