冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う「その後のお話し」
「勉強熱心ですね。日本人は勤勉だ。それに思いやりがあって、他人に優しい。」
莉子は日本人の事を褒められて、なんだか誇らしい気持ちになって微笑む。

「だけど、日本は女性差別がいまだに根強い。女性を蔑む男性は多く、学問を学ぶことも許されない傾向がある。僕はそれが残念で仕方がないです。」

その言葉を聞いて莉子は少し悲しくなった。
確かにそういうところがあるから、反論は出来ない…。

「…君はもしかして結婚しているんですか?」
左手の薬指の指輪をじっと見て、ブライアンは怪訝な顔をする。
「はい…。」
と、莉子は素直にそう返事をする。

「…失礼ですが、貴女は何歳ですか?」

「今年19になります。」

なぜ突然歳を聞かれたのか、理子は不思議に思って首をかしげる。

「日本人は皆、女性は若くして結婚してしまう。それは無知なままに女性を従わせると言う男の強い願望ではないか、と僕は思う。」

それはどういうことだろう?と莉子は司のことを思う。
夫である司は、決して強く従わせるような事を言わないし、むしろ莉子が知りたい事に対して、いつだって丁寧に答えてくれる、良き先生なのだから…。

確かに日本では男性を建たせて、女性が一歩後ろを行く、と言う昔ながらの習わしがある。

でも今のこの明治の時代になって、職業婦人だってふえてきた。昔よりももっと自由に女性であっても、自立して生きられる時代になってきたと思う。

それでもなお、女性の社会進出は数が少ないし、周りからの視線もまだまだ冷たいところがある。

莉子は反論出来ずに、まるで叱られた子供のようにシュンとしてしまう。

「あなたは…自分の意思で結婚をされたんですか?」
ブライアンはそんな莉子の気持ちも知らずに、ずかずかと容赦なく踏み込んでくる。

「私は、自分の意思で夫との結婚を決めました。」
それだけは顔を上げてちゃんと言える。

「あなたは旦那さんから、暴力を振られた事はありますか?」

暴力…
出会った時の事を思い出す。

あの時は身代わりだったのだから、仕方がなかったのだ。自分にも非があったのだから司のせいではない。

だからって、嘘が付けない性格だから、
「結婚してからはありません。」
と、答える。

「貴女は今、幸せですか?」

その質問には絶対的にはい、と言える。

「もちろんです。とても良い人に巡り会えたと思っています。」
莉子は笑顔と共に胸を張ってそう答えた。

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