クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
「偶然だね。一之瀬くんも、お買い物?」
「……ああ」
田中さんに、そっけなく答える陽向。
「ここのスーパーに買い物に来たってことは、もしかして一之瀬くんのお家ってこの辺り?」
「……別に、家なんかどこだって良いだろ」
冷たく言い放つと、陽向は歩き出す。
「ごっ、ごめんね。余計なこと聞いちゃって。それじゃあ、また学校で」
「……」
田中さんに返事もせず、足を進める陽向。
ああ。陽向ってば、またあんな態度をとって……!
「ちょっと、陽向!」
私は田中さんの姿が見えなくなったところで、陽向に声をかけた。
「田中さんは、クラスメイトなんだから。無視するとか、そういうの良くないよ」
さっき陽向に冷たくされたとき、田中さん泣きそうな顔をしてた。
私は学校で、田中さんが陽向によく話しかけているのを見かけてたから。
多分、彼女は陽向のことが好きなんだと思う。
陽向に冷たい態度をとられる彼女が、少し前の自分に重なってしまって。
同じ人を好きになった者として、どうしても見て見ぬふりはできなかった。
「なんだよ。俺が女子と仲良くしようがしまいが、どっちでも良いだろ? 星奈に迷惑かけてねえし」
「そうだけど……」
「それとも星奈は……俺に、他の女子と仲良くして欲しいわけ?」