クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
天音ちゃんの目線の先には、昨日陽向が私に貸してくれたハンカチが。
さっそく家で洗濯して持って来たんだけど、陽向に返す機会が見つからなくて。
「それにしても、氷王子もなかなか良いところあるじゃん。ちゃんと血の通った男だったんだね」
血の通ったって、天音ちゃん……。
「昨日の一件で星奈、一之瀬くんのことやっぱり好きだなって思ったんでしょう?」
「うん」
「だったら彼を誰かに取られちゃう前に、いま頑張るしかないね。許嫁だってうかうかしてたら、あとで泣いて後悔することになるんだから」
天音ちゃんの言うように、泣いて後悔だけはしたくない。
せっかく許嫁になったんだもん。これを機に、少しでも陽向との仲を取り戻したい。
昨日陽向に優しくしてもらったんだから、私からも更にもう一歩、歩み寄りたい。
でも、どうしたらいいんだろう。
学校じゃ何となく話しかけづらいし。
「あっ、こうちゃーん!」
すると天音ちゃんが突然、カツ丼が載ったトレイを手にキョロキョロしている“こうちゃん”こと、水上虹輝くんを呼んだ。
「えっ、なんで……」
そう言う私に天音ちゃんはパチッとウインクし、任せろとでも言うように親指を立てる。
「ねえ、ここ二人分の席空いてるよー!」
「まじ? それじゃあ、そこに座らせてもらおっかなあ」
天音ちゃんの呼びかけに、水上くんがニコニコ顔でこちらへとやって来た。