クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
「うそ。一之瀬くんが笑ってる」
「やばいやばい」
いつもクールな陽向のレアな笑顔に、周りの女子がザワザワする。
「あの、陽向……」
「なに?」
こんな皆がいるところで、陽向って呼んで。
もしかしたら睨まれるんじゃないかと、ビクビクしたけど。
返事をしてくれたことにホッとする。
「昨日は、ハンカチありがとう」
「いいよ」
「あと、これ……お礼にクッキー焼いてきたの」
「おー。サンキュ」
私がハンカチとクッキーを渡すと、陽向はちゃんと受け取ってくれた。
「あれあれ。ヒナくん、そのハンカチは?」
「なんでもねえよ」
「ていうか今更だけど、ヒナくんと澄野さんって知り合いなの?」
「えっと……」
水上くんに聞かれた私は、言葉につまる。
しまった。私ったら、こんな人が沢山いる学食でハンカチを返したりして。軽率だったかも。
陽向と許嫁だってことは、言うなって言われてるし。幼なじみもダメなら、なんて答えれば……。
「……幼なじみだよ」
私が迷っていると、正面に座る陽向が口を開いた。
「俺と星奈は、幼なじみだ」