クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
私の心の声が、お父さんたちに届くことはなく。
陽向と二人、その場に残されてしまった。
「……」
陽向は顔色を変えることなく、黙々とモンブランを食べている。
「やだあ。最高じゃない」
「それでね……」
他のお客さんが楽しそうに会話する声が聞こえるなか、私たちの席だけ沈黙が流れる。
「……」
き、気まずい。けど、せっかく一緒にいるんだし、何か話したほうが良いのかな?
でも、話すにしても一体何を話せば……。
陽向とふたりきりという状況に、緊張からかドクドクと身体中に響くくらい心臓が激しく脈打っている。
「……ごちそうさま」
ポツリと声が聞こえ、そちらに目をやると。
陽向は胸の前で手を合わせ、いつの間にかモンブランを綺麗に食べ終えていた。
「陽向、モンブラン……美味しかった?」
「……ああ」
思わず尋ねてしまったけど、陽向に無視されなくてホッとする。
たった一言返してもらっただけで、とてつもなく嬉しい気持ちになる。
よし。この調子で少しでも会話を……。
「でも、まさか私たちが許嫁だったなんてびっくりだよね」
すると、陽向にギロリと睨まれる。