クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
翌日。土曜日の夕方。
「それじゃあ、星奈。陽向くんによろしくね」
「うん。行ってらっしゃい」
私は自宅前で夜勤に行くお母さんと別れると、近所の陽向の家へと向かう。
土曜日限定の陽向の家でのふたり暮らしも、早いものでそろそろ2ヶ月になる。
──ピンポーン。
最初の頃は、陽向の家のインターフォンをただ押すだけでもやけに緊張したけど。
さすがに今はもう慣れた。
ガチャッ。
家のドアが開き、陽向が顔を出す。
「……うっす」
「こんにちは」
私が挨拶すると、陽向が私の前までやって来る。
「……」
ん? どうしたんだろう?
「星奈……おでこ」
すると、陽向が私の前髪を手でかきあげる。
「良かった。もうすっかり治ったみたいだな」
私のおでこを見た陽向が、微笑む。
「もし怪我の痕が残ったりしたら、どうしようかと思った」
……あ。
陽向は、この前私がおでこにバレーボールが直撃したときのことを、まだ気にしてくれてたんだ。
あれは、陽向がぶつけた訳じゃないのに。
「ありがとう。もう大丈夫だよ」
おでこを親指で優しく撫でてくれる陽向に、私も微笑んだ。