続・泣き虫の凛ちゃんがヤクザになっていた2
 その夜、私は一人で帰宅して、先に夕飯を済ませた。
 凛ちゃんからは、「帰りが遅くなるかもしれない」とメッセージが送られていた。
 シャワーを浴びながら、私は凛ちゃんのことを考えている。
 私は亡くなった組長とは会ったこともないし、凛ちゃんとどれだけ親しかったのかも知らない。だから、凛ちゃんが今、どんな心情なのか想像できない。
 
 凛ちゃんは落ち込んでいるだろうか。
 彼が帰ってきたら、私はどんなふうに接するべきなのだろうか。

 ぐるぐると考え事をしていると、突然浴室の扉が開き、私は驚いて「わっ!?」と飛び上がった。
「あれっ?凛ちゃん?」
 振り向くと、全裸の凛ちゃんが(うつむ)きながら立っていた。
「帰ってたの?」
 すると、凛ちゃんは私を強引に抱き寄せて、そのまま口付けた。
 
 そう言えば、キスしたの、いつぶりだろう?
 凛ちゃんに口内を暴かれながら、私はそんなことをぼんやりと考える。
 今までは、少なくとも三日に一度は身体を重ねていたのに、いつの間にかキスすらする暇がなくなっていた。

「……ほったらかしにして、ごめん」
 凛ちゃんは唇を離すと、私の目を真っ直ぐ見ながら呟く。
「寂しかったか?」
 久しぶりに見る彼の熱を帯びた視線に、私はむず痒さを感じる。
「……ちょっと、寂しかった」
 私は視線を下げながら答えた。
「ごめん、これからは気を付けるから」
 凛ちゃんはそう言って、私を優しく抱きしめた。
 私の身体に、彼の熱や心臓の鼓動が伝わってくる。
 それと同時に、私は涙が出そうになった。どうやら、私は自分が思っていた以上に、寂しさを感じていたようだ。

 凛ちゃんは私の身体を軽く押して壁際まで連れて行き、私は壁に背を付けた。
 そして、凛ちゃんは軽く触れるだけのキスをすると、今度は舌を私の耳や首筋に這わせる。
 軽く触れられているだけなのに、どんどん身体が熱を帯びていく。
 私は「もっと触れてほしい」と強請(ねだ)るように、凛ちゃんの大きな背中にしがみついた。
 彼の身体に彫られた龍の入れ墨は、もうすっかり見慣れてしまった。

 凛ちゃんは私の乳房を両手で優しく掴むと、先端を口に含んで、舌で転がし始めた。
 優しい愛撫なのに、私の身体はそれを強い刺激だと感じ取ってしまう。
「んっ……」
 浴室の中なので、いつもより声が反響する。
 私は恥ずかしくて、(こら)えようと唇を噛みしめた。
 そして、身体の熱を逃がすために、凛ちゃんの二の腕をグッと強く掴む。

 愛撫する凛ちゃんの手つきは、いつも優しく、まるで壊れ物を扱うようだ。
 しかし、欲望に満ちた彼の目は「私を乱暴に抱き潰したい」と訴えている。
 それなのに、彼はいつも私を壊さないように、傷つけないように、その欲望を理性で押さえつけてくれる。
 私のために堪えてくれている凛ちゃんの姿を見ると、彼がどれだけ私のことを大事にしてくれているのか実感できた。

「こっちの足上げろ」
 目の前で(ひざまづ)いた凛ちゃんは、私の右のふくらはぎを掴む。
 私が言われるがまま右足を上げると、凛ちゃんは自分の肩の上に私の足を乗せる。
 凛ちゃんは私が倒れないように腰と足を支えながら、私の股の間に潜り込む。
「これ、濡れてんのお湯じゃねぇよな?」
 凛ちゃんは私の性器を指でなぞりながら、クスクスと笑う。
「や、いわないで……」
 そして、凛ちゃんは私の性器に舌を這わせた。
 私は襲い掛かってきた快感に身をよじらせ、濡れた手で凛ちゃんの頭を掴む。
「やっ、だめ……」
 敏感なところを何度も舌で弾かれたり、吸われたりを繰り返し、そのたびにビリビリと身体が痺れる。
 そして、私は身体を仰け反らせながら、呆気なく果ててしまった。

 凛ちゃんは私の足を下ろし、ゆっくりと立ち上がる。
「壁に手を付いて、尻をこっちに向けろ」
 私は息を整えながら、凛ちゃんに背を向けて、壁に手を付く。
 すると、凛ちゃんは私の腰を力強く掴んだ。たったそれだけなのに、私はこの後何が待ち受けているのかを想像して、思わず身もだえる。
 彼は焦らすように勃ち上がった性器を私の尻に擦り付けながら、私の背中に何度も口付けたり、舌を這わせたりする。
「……綺麗な背中だな」
 凛ちゃんはボソッと呟いた。
「な、何……?」
「何でもねぇよ」
 
 そして、凛ちゃんはゆっくりと私のナカに挿入していく。
 私が経口避妊薬を服用するようになってから、避妊具は使わなくなった。
 私は久しぶりの快感に、思わず身体がビクビクと跳ねてしまう。
「奥まで挿れていいか?」
 凛ちゃんは後ろから私を抱きしめながら、耳元で囁く。
「奥まで、きて」
 私の返事を聞くと、凛ちゃんは一気に奥まで突き上げた。
 すると、私の目の前で火花が弾け、耳元では彼の吐息が聞こえた。

 凛ちゃんは私を抱きしめたまま、何度も腰を打ち付ける。左手で私の腰を掴んだまま、右手で乳房をやわやわと揉みしだき、指の腹で先端を転がす。
 私は何度も押し寄せてくる快楽で、ガクガクと足が震える。
 しかし、それでも私はまだ刺激が足りず、更なる快感を求めて自ら腰を揺らす。
 浴室内には私の悦に浸った声が響くが、それを我慢できるほどの余裕は既になくなっている。

「自分から腰振りやがって……。そんなに俺が欲しかったか?」
 荒い息遣いの凛ちゃんが、意地悪な声色で囁く。
「……っ、ほ、ほしかった」
 もうすっかり理性を失ってしまった私は、無意識のうちにそう答えていた。
 
 そうだ。私はずっと凛ちゃんに触れてほしかったのだ。
 こんなふうに激しく私を求めて、抱いてほしかった。

「……っ、お前なぁ。こっちは我慢してるっていうのに……」
 呆れたような、そして興奮したような声で、凛ちゃんは囁く。凛ちゃんの荒い息が私の耳を刺激して、私の脳はどんどん溶かされていった。
 すると、凛ちゃんはさらに腰の動きを激しくさせた。
「あぁっ、や、ぁ……」
 何度も奥を突き上げられ、体中がビリビリと痺れる。そのたびに、何度も軽く達してしまう。

「ゆき、ナカに、出すぞ……」
 凛ちゃんは耳元で苦しそうに囁く。
「ナカ、だして……」
 そして、私の最奥を突き上げると同時に、欲望を吐き出した。
 私も突き上げられた快感によって、絶頂に達した。

「……りん、ちゃん、キスして」
 私は後ろを向きながら、額に汗を滲ませた凛ちゃんの頬を撫でる。
 凛ちゃんは私の後頭部に手を添えると、優しく啄むように何度も口付けてくれた。

「風呂から出たら、続きやるぞ」
 凛ちゃんは、再びギラギラとした視線を私に向ける。
「まだするの?」
 私はもうヘロヘロだった。
「久しぶりなんだ。一回で足りるかよ」
 凛ちゃんの言葉に、私は困っているふうを装ったが、内心は満更でもなかった。
 
「今度は、お前の顔を見ながらしたい」
 凛ちゃんはそう言って、私の唇にむしゃぶりついた。
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