続・泣き虫の凛ちゃんがヤクザになっていた2

6話◇

 ――無理に『おとうさん』なんて呼ばなくていいよ。でも、おじさんは凛くんともっと仲良くなりたいな。

 やだ……。

 ――どうして逃げるの?何も怖がることなんてないのに……。

 やだ、やめて。助けて、お母さん。助けて、……幸希ちゃん。

 ――おい!どこ見て歩いてんだよ、のろま!

 お前こそ、どこ見て歩いてるんだよ。

 ――さっきの威勢はどうした?楽に死ねると思うなよ、このクソガキ。

 やめろ、俺に触るな。やめろ、やめろ、やめろ……。



「――凛ちゃん」

「やめろ!!!」

 目を覚ました俺は、こちらに向かって伸びてくる手を、反射的にバシッと払い除けてしまう。
 目の前には、驚いた表情で俺の顔を覗き込んでいる幸希がいた。
「ご、ごめん……」
 幸希は申し訳なさそうに、俺が払い除けた手を引っ込めた。
「いや、俺の方こそ、悪かった……」
 俺は息を整えながら、徐々に冷静さを取り戻していく。
「大丈夫?うなされてたみたいだけど……」
「大丈夫だ。……ちょっと、嫌な夢を見ただけだ」
 俺はそう言って、幸希から目を逸らした。
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