続・泣き虫の凛ちゃんがヤクザになっていた2

4話

 オヤジの通夜には、反田組の人間だけが参列した。
 オヤジは奥さんに先立たれており、実の子供はいない。
 通夜の間、普段は鋭い眼光と態度で相手を威圧しているような強面の男たちが、柄にもなく涙を流していた。

 ちなみに、新たな組長が就任するのはもう少し先になるらしく、それまでの間は叔父貴が組長代行として指揮を執るようだ。といっても、次期組長は宮永さんで決まりだろう。
 反田組はそれなりに大きな組織なので、諸々の引継ぎやら挨拶回りやらで時間が掛かるだけだ。

 俺は、オヤジと直接話す機会があまりなかった。しかし、そういった人間は反田組の構成員でも珍しくない。
 初めてオヤジと顔を合わせたのは、俺が反田組に入る時、つまり親子の盃を交わす時だった。

 ――シゲ(宮永繁明(しげあき))から聞いてるぞ。カタギの時に、喜一を殴り飛ばしたんだって?柴犬みたいな可愛い顔して、よくやるねぇ。けど、俺はそういう度胸のある小僧は好きだぞ。

 オヤジは、ガハハと豪快に笑っていた。
 若い頃は抗争で何人も殺したという噂を耳にしていたため、会う前はどんな極悪人がやって来るのかと身構えていた。
 しかし、実際に会ってみると、何てことないただの気前のいい爺さんだった。

 ――喜一はガキの頃、血の繋がった親父にサンドバッグみたいに扱われてたんだ。だから、殴られると大嫌いな父親のことを思い出して、我を忘れるところがあるんだよ。

 オヤジは憂いを帯びた表情で、そう語った。
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