狂おしいほどに、抱きしめて〜エリート社長と蕩けるような甘い蜜愛〜
「……どうして?」

翔は、ただ純粋に、栗花落に優しく問いかける。
栗花落は答えた。

「私が本当のことを話してしまったら、他の社員の評価を下げることになります。これは私だけの問題ではありません。人が関わっています。社長に本当のことを話したら、今後、その社員の処遇にも影響するかもしれません。だから……その」

「優しいんだな」

「……え?」

栗花落はゆっくりと顔を上げる。
優しい? 私が?
その言葉には、疑問が残った。
すると、翔はこちらを見て、そっと微笑みかける。

「泣くほど嫌なことがあったのに、他人の心配ができるのか。俺ならきっと、この状況で黙っていることなんてできないよ」

「……それは」

確かに翔の言う通りだが、やはり、本当のことは言えない。
言ってしまえば、栗花落個人の問題では、済まされなくなってしまうように思うから。

「確かに、俺は社長だからな。ハラスメントの話をされれば、それ相応の対応をするよ。葛西さんが何かされたのだとしたら、俺は黙っていることなんてできない」

「ハラスメントでは……なくて」

「そうなのか? でも、嫌なことがあったんだろう?」

「……私。あの、その」

拳をぎゅっと握りしめ、頭の中で言葉を選ぶ。
すると、最初に出てきた言葉は、懺悔だった。

「私が、悪い部分もあったと思うんです」
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