狂おしいほどに、抱きしめて〜エリート社長と蕩けるような甘い蜜愛〜
「……それは、なんだ?」

翔は静かに問いかける。
栗花落は、冷静に続けた。

「私が、現状に満足していたんです。このままで良いって、自分に言い聞かせていたんです。でも、他の人はそうじゃなかった。私がその人と、コミュニケーションを取ることを怠ったんです」

勝とセックスレスが続くようになってから、栗花落自身、諦めていた部分も大きかった。
勝も栗花落も、お互いの身体を求めないものの、一緒に過ごす時間は居心地が良くて、幸せを感じられたのだ。

夜になって、彼を誘っても、勝は「疲れてるから」と栗花落にそっぽを向けた。
逆に、勝の方から声をかけてくれた時は、「……生理だから」と、断ることもあった。

お互いのタイミングが合わなくて、半年近くレスが続いてしまったけれど、栗花落は次第にそれも受け入れられるようになって、レスという事実がそこまで重く感じることはなかった。

しかし、勝にとっては、そうではなかったのかもしれない。

「……そうか」

翔はそれだけ言って、コーヒーを飲む。
そしてカップをテーブルに置くと、彼はスッと立ち上がった。

「嫌なことがあった時、自分も悪かったと思うことはよくある。……でも」

翔は栗花落の横に腰掛けると、栗花落の両肩に手を置いた。

「また、身体が震えてるぞ?」

「――!」
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