狂おしいほどに、抱きしめて〜エリート社長と蕩けるような甘い蜜愛〜
いつの間にか、自分でも気づかぬうちに、身体が震えだしていた。

……そうだ。
翔の優しさに触れて、栗花落は唇をきゅっと噛む。

本当は、自分が悪いなんて、一ミリも思っていない。

勝と一緒に居る時間が、ただ楽しかった。
お互いに笑い合っているのだから、それで問題はなかった。

実際に、勝は栗花落にプロポーズをしてくれた。
その状況で、彩絵と関係を持つなんて、やっぱり、人として最低だ。

(私は……ただ)

「悔しいですっ……! 私、悔しいです……っ!」

本音が、ついに口からこぼれ出た。
それは止まることを知らず、栗花落の思考を埋め尽くす。

「どうして! 私の幸せを邪魔されないといけないんですかっ! 私が何をしたって言うんですか?」

勝と二人で居るのが、ただ幸せだった。
彩絵に仕事を教えながら、自身もキャリアアップできている今が幸せだった。

「嫌いって……なんでですか? 私が何か、悪いことをしましたかっ?」

思い出しただけでも、反吐が出る。
彩絵には今まで、最大限の情を持って優しく接してきたのに、彼女は恩を仇で返してきた。

大好きな人まで寝取られて、暴言を吐かれて、これ以上黙って見過ごすことなんてできない!
いや、見過ごすなんて、絶対にダメだ!

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