狂おしいほどに、抱きしめて〜エリート社長と蕩けるような甘い蜜愛〜
ふふっ。
栗花落はこの瞬間、初めて笑顔を作る。

「怒鳴りこむなんて……。どうして社長が」


「────だって、好きだから」


「……え?」

栗花落は、想像していなかった一言に、目を丸くする。
しかし、目の前に居る翔の瞳は、至って真剣だ。

「葛西さんに恋人がいたことは知っていた。だから、今まで手は出さなかったんだが……。別れたんだよな? それならもう、なんの問題もない」

「……?」

翔は栗花落の両肩に正面から手を置いて、そのまま顔を寄せる。
そして、そっと優しく、栗花落のおでこに口づけをした。

「んっ」

思わず声が出て、栗花落の顔は紅に染まる。
翔の唇は肌から離れて、彼は栗花落に向かって小さく笑った。

「好きだ。栗花落」

(つ、栗花落!?)

いきなり名前で呼ばれて、今度こそ動揺を隠せない。
しかも、愛の告白までされたのだ。
あの、尊敬する非の打ち所がない完璧社長に。

「いきなりだと思うか? 今まで、それなりにアピールしてきたつもりだったんだが」

今まで、翔とは何度か、プロジェクトで仕事を一緒にしたことがある。
確かに、他の社員より気に入られているのかな? と思うことはあった。

話し掛けられる回数が他の社員より圧倒的に多く、些細な質問はすべて、栗花落に問いかけていた。
距離感も近いと思っていたし、好きとまではいかずとも、目をかけてくれているのかな? と思っていた。

そんな彼からの告白に、身体が自然と硬直する。

(えっ。好き? 私が? こんな私が、蓬田社長の目に留まったって言うの!?)

「あ……あの」

もじもじと身体を揺らすと、翔はクスッと笑う。


「俺、好きになった女は必ず落とすって決めてるんだ」


「……へっ?」

栗花落が目を白黒させても、翔は続ける。

「栗花落の新しい恋人に、俺が立候補してもいいか?」

「こ、いびとっ?」

翔は顔を寄せて、こちらを試すように微笑んだ。

「恋愛でできた傷は、俺で癒やすんだ。俺は絶対に、栗花落を泣かせたりしないから」

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